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効果的な認知症ケアの海外事例のまとめ

認知症は根本療法がなく認知症患者に対するケアをどうするかは、日本だけでなく世界各国で大きな課題となっています。ケアに関して「こうすれば良い」という絶対的な方法はなく日々試行錯誤が続けられています。このような状況のなか、広く認知症ケアがどのように行われ、どのような効果をあげているかを知ることはとても有意義です。海外で行われ効果をあげている認知症のケアの代表的な事例を紹介します。

■事例1 信頼関係を築き暴力行為もなくせる「ユマニチュード」

71bb8068a1060bb71f08e14ac08c34fd_mフランスで生まれた認知症ケアの「ユマニチュード」は、日本にもすでに紹介されてその効果が注目を集めています。ユマニチュード」は、認知症患者と介護者の間の信頼関係を築き、うつ状態で暴力的になる患者も穏やかにさせられるという特徴があります。「ユマニチュード」の実践は難しくなく簡単にできるため「魔法、奇跡の方法」と高く評価されています。

実践方法として、細かくは150以上のテクニックが用いられますが、基本は「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つです。そのなかでも「見る」は重要です。認知症患者は視野が狭くなるため、患者と同じ目線で近距離から、愛情と親しみを込めて見つめます。こうすることで、介護者は患者にとって敵ではなく味方であると認識してもらえます。

「話す」では、患者の反応がなくても常に前向きな、明るい言葉で心を込めて話しかけます。患者は、介護者が行っていることを、「作業」なのか「心のこもったケア」なのかを判別しています。そのため事務的な口調では信頼関係を築けません。

「触れる」は、患者に安心感を与えられます。無言ではなく話しかけながら優しく包み込むように触れると効果的です。

「立つ」は、信頼関係よりも、立つことで人間として生きていることを実感として患者に感じさせ、それを長く続けられるようにして「筋力の維持」「骨そしょう症の防止」などによる身体機能の維持を目的として行います。1日に20分間以上立つことが目標です。

これらの方法を行うことで、患者と介護者に強い信頼関係が生まれ、介護者にとって患者の嫌な行動が驚くほど改善する効果が得られます。

■事例2 生活支援より人を重視する「パーソン・センタード・ケア」

122bce51439c6782f607afffc7a5d269_m認知症になると知的能力が低下し日常生活や社会生活に支障がでます。そのため、患者の生活を主に支援するケアが行われますが、生活支援よりも人を尊重し重視したケアを行うのが、イギリスで生まれた「パーソン・センタード・ケア」です。

認知症患者のケアは、患者の病状をケアする側の都合や思い込みで判断して行われます。これは、患者からみると必ずしも希望することをしてもらえないので、押し付けられたケアだと感じます。この行き違いは、患者を混乱させBPSDを悪化させます。そこで、認知症患者が混乱しないように、患者が何を求め、どのように感じ、どうしたいかを考えて、その意向にそったケアを行うのが「パーソン・センタード・ケア」です。

「パーソン・センタード・ケア」は、同じ認知症の患者でも一人ひとりは異なった人間としての認知能力や生き方、人間関係などを持っていることから、その人間らしさを失わないようにケアする方法です。人は、誰もが自分らしく生きたい、自分の人生は自分で決めたいと考えています。しかし、認知症によってできなくなるかもしれないという不安を認知症患者は強く持っています。「パーソン・センタード・ケア」は、その不安を取り除き患者が希望する人間らしく生きることを支援します。

■事例3 認知症患者の世界を理解して共感してケアを行う「バリデーション」

64347a162f06c77471464b0de226c7b4_m認知症患者の見えている世界は、介護者の見えている世界と異なっていることがあります。患者が誰かいると騒ぐときに適当に「そうだね」などとあしらわずに一緒に何が見えているかを確認して患者の見えている世界に近づき共感するようにします。また、夜中に誰かが入ってきたと騒ぐときには、「私がいるからもう大丈夫」と適当にいうのではなく、患者の世界に入って患者の見えている世界を理解して、共感しあえるような会話を行います。こうしてケアを行うのが、アメリカで生まれた「バリデーション」です。

このように共感をできるような会話を相手の目を見つめて優しく行うと患者が騒いでいてもその症状が落ち着きます。この方法では、患者と接するときに14のテクニックがあります。例えば、会話では「患者のいったことを繰り返す」「思い出話をする」「質問するとき、はい、いいえで答えられる質問ではなく、なぜ、どうしてのように相手の考えがわかるような質問をする」などのテクニックがあります。

また、会話は「落ち着いた声ではっきりと優しく話す」「親しみのあるアイコンタクトをする」「患者が心地よいと思う体の場所を優しく触る」を行います。これら「バリデーション」を行うことで、いままでなかなか抑えられなかった患者の行動を落ち着かせられます。

■まとめ

フランス、イギリス、アメリカで効果の上がっている認知症のケア事例を紹介しました。これらの国以外にもスイス、オランダ、ベルギー、ドイツ、デンマーク、スコットランドなどで参考にできる事例があります。生活重視のケアはある意味で人間性を無視したハード的なケアです。今後、より良い認知症患者のケアのためには、諸外国の例のように人間性を尊重したソフト的なケアがハード的なケアに加えて、もっと行われることで必要といえます。

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