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5.242016
育児と介護のダブルケア、その現状と課題
「ダブルケア」という用語はまだ一般的に広く知られていません。しかし、今後「老老介護」「認認介護」など介護を取り巻くさまざまな問題の1つとして大きな問題となっていくことが懸念されています。内閣府も2016年4月「ダブルケア」に直面する人が約25万人いると推計されると初の調査結果を発表、今後何らかの対策を要する認識を示しています。そこで「ダブルケア」とは何か、その現状と課題について解説します。
■ダブルケアとは?
ダブルケアとは、育児と介護の2つのケアを同時に行わなければならない状態のことを意味する用語です。近年、高齢者の人口比率の増加に加えて、結婚・初産の高齢化が進展しています。さらに兄弟・姉妹の数も少ない少子化の進展という家族構成の変化や地域社会のつながりの疎遠化。そして、保育施設、介護施設の不足もあいまって、今後育児をしながら親の介護もしなければならないというダブルケアに直面する世帯が増加し大きな問題になっていくと懸念されています。
■ダブルケアの現状
内閣府の先の調査によるとダブルケアに直面しているのは女性が16.8万人、男性が8.5万人で合計25.3万人です。今後のこの人数は増加することはあっても減少することはないと考えられます。なお、この調査では育児対象が未就学児に限定されています。小学校の低学年もまだまだ手がかかることを考慮するとダブルケアに直面している人の数はさらに多くなります。そして、保育施設も介護施設もともに受け入れ人数が不足し、他に頼れる親戚縁者も少ないことから、やむなく仕事の量を減らしたり、仕事を止めなければならなかったり、またうつ状態になるなどの課題が浮かび上がってきています。
今後、ダブルケアの課題解決のためには行政の支援が強く求められています。子育てと仕事、あるいは介護と仕事という個別の問題よりも、より深刻な問題だけに社会全体で取り組んでいかねばなりません。しかし、ダブルケアの認知度は、まだまだ低く社会全体では約8%しかなく、ほとんどの人に認知されていません。
■課題解決に必要なものとは?
(1)縦割り行政の弊害
日本では、介護保険制度は介護保険制度のみの視点で、また育児支援は育児支援のみの視点で、それぞれ個別・独立して縦割り行政で制度の充実が図られてきています。ダブルケアの問題は、個別の制度では支援する側も、支援される側にも効率的でない問題が起こることが予測されます。そのため厚生労働省は、介護と保育に加えて障がい者の施設をも1つにまとめて運営できるように規制緩和を検討していると発表しました。この規制緩和は、介護関係や保育関係の従事者の不足・施設の不足のなかで1+1+1=3で面倒を見ないで、1+1+1=1で効率よく面倒をみようという考え方です。
一見、合理的ですが合理性だけの視点での統合では、今でも介護、保育の仕事は忙しすぎて給与も低いと敬遠されています。下手をすると2倍、3倍の重労働になり、器はできても運営できる中身がないことになることも考えられます。厚生労働省の試算によれば、介護職は団塊の世代がすべて75歳以上となる2015年には、およそ33万人不足、保育職は2018年でおよそ7万人が不足と推計しています。そのため、制度の考え方は合理的でも、それは介護職、保育職の人たちの荷重な労働を今よりも課すことになり、まったく機能しない可能性があります。縦割り行政の弊害をなくすとともに介護や保育職の人に負担を押し付けない制度設計が求められています。
(2)ダブルケアの課題や必要な支援の調査研究が不足
課題を効果的に真に解決するには、ダブルケアの本質的な問題点や現場が必要としている支援がどのようなものであるか、今は顕在化していない隠れた問題点がないか、発生しないかなどの調査・研究が必要ですが、それが現時点で明らかにした調査・研究がないといわれています。今後の調査・研究が求められています。
(3)精神的なより所の場所の提供
公的な制度で経済的、人的な支援を行うとともに、精神的なケアや気軽にダブルケアの問題を相談できる精神的なより所を提供する場も今後必要になっていきます。これら課題を総合して解決していかない限りダブルケアは、今後大きな社会的な問題になっていくことでしょう。
■まとめ
まだ、あまり多くの人知られていない育児と介護の2つのケアを同時に行わねばならない問題をダブルケアについて説明し、ダブルケアの現状と課題について解説しました。仕事をする女性が増加しているなか、育児も介護のどちらか1つだけでも仕事が犠牲にしなければならないケースが増加しています。それが同時に2つのケアを行わねばならないダブルケアの大変さや負担の重さは、単に2倍になるのではなく3倍以上になり、行政の支援が強く求められています。
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