高齢の親を介護のために施設に入居をすすめることは、すんなりと親が入居に同意しないことが多く、説得方法に悩んでいる人が多くいます。この問題に対してこうすれば必ずうまくいくという魔法のような対策はありません。人の性格や考えは多種多様で人によってすべて異なるからです。

しかし、入居を嫌がる理由には本音と建前があります。建前の理由に対していくら説得しても効果はありません。本音の理由をさぐり出し、その理由を一緒になって解決するように持っていくことで説得しやすくなります。親が介護施設に入居することを嫌がる一般的な理由、および本音を聞きだす方法について解説します。

■親が介護施設への入居を嫌がる理由

親が介護施設への入居を嫌がる理由は、微妙な違いまで含めると人の数だけあるといっても良いでしょう。それほど人の心理は複雑で多種多様です。しかし、大きく分けると「お金」「人間関係」「環境変化」「介護施設への偏見」「疎外感」「家族に対する誤解・不信」「自活できるという過信」に分けられるでしょう。もちろん、入居を嫌がる理由は1つではなく、これらの理由が複数の重なっていることも考えられます。

親の本音が「家族が私を施設に追いやろうとしている」と考え、「疎外感」や「家族に対する誤解・不信」で、それへの反発で施設への入居を嫌がっているとします。このときに表にでてくる建前の理由が「お金がない」、あるいは「お金の負担をかけさせたくない」かもしれません。このときに、「お金」はまったく心配しなくても大丈夫と説得しても、説得させられないことは明らかです。個人、個人で入居を嫌がる理由は千差万別なので、できるだけ多くの嫌がる理由を想定して、本音をさぐりながら本音に対する説得を、丁寧に心を込めて行わねば説得は成功しません。

■本音をさぐり出す心理学的なテクニック

一般的に親子の関係であれば、本音と建前を使い分けるようなことはあまりしません。しかし、親子の間、親族の間だから本音をさらけ出して、建前は言わない、あるいは隠しごとをまったくしないということは決してありません。親子や親族の間だからこそ、むしろ建前を言ってしまうことが考えられます。そのため、本音に迫るために工夫する必要があります。心理学的に本音を聞きだすときに有効なテクニックがあります。そのテクニックについて以下にご紹介します。

（1）質問をするときは少し否定的な筆問

例えば、食事を作ってあげたとき、「この料理はおいしかったですか？」とストレートに聞くと、多くの人は相手の立場を考慮して本音を隠して建前の回答をします。このような場合に本音を聞きだすには、「この料理少し味が濃すぎませんでしたか？」と否定的な内容で聞くと、最初の質問よりは、はるかかに多くの人は、相手もそう感じているからと自分の考えを述べても良いかもしれないと正直な回答が返ってきます。

親子間や親しい間柄では、食事の味の話題程度では、最初の質問でも正直な回答が返ってくることでしょう。しかし、親子間でも微妙な問題であれば、常にどんな質問にも正直な回答が返ってくるとは限りません。真正面からの質問を避けることで本音に迫れます。

（2）できるだけリラックスした会話

親子間だから、常にリラックスしており、何も他人と会話するように改まったような会話はしていないと言う人が多いと思います。しかし、重大な問題を会話するとき、あるいは相手が嫌がることを説得するときなどは、親子間といえども自然と少し改まった口調になります。また、口調はリラックスしていても顔に緊張の色や苦痛の表情が知らない内に浮かんでいる可能性があります。そうであれば当然、親も身構えます。身構えてしまうと、もし言いたくないと本音があると、本音は心の奥深くにしまいこまれて出てこなくなります。

リラックスした会話では、緊張感とともに抵抗感が薄れるので本音が出やすくなります。リラックスした会話をするには、まず自分自身がリラックスしなければなりません。そして、親にとって楽しい会話ができる話題から入り本音と思われることを聞きだすために「少し否定的な質問」のテクニックを使って確認すると本音がでて来やすくなります。

■本音が分かればその本音を親子一緒になって解決

本音が分かれば、その本音に対する説得を正面から行うのではなく、一緒になって解決していこうというスタンスで話を進めます。親も自分の好きなようにしたいという意思はありますが、一方で子どもに負担をかけたくないという思いも多くの親が思っています。お互いが幸福になれるためにはどのような結論がベストかということ考える話し合いを行うと理解が得られる可能性が高まります。

■まとめ

親が介護施設などへの入居を説得するのはとても重い大きなテーマです。親子間だからこそ感情的になって、うまく説得できないことが多く起こっています。介護施設に入居したくない理由は、多種多様でこの方法であれば成功するというような方法はありません。そこで今回は、説得がうまくいかない理由の1つ、建前の理由に対して説得して効果がないこと、および心理学的に本音を聞きだす効果のあるテクニックのなかから2つを紹介しました。